日本心臓血管外科学会雑誌
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Letter to Editor
MICSの安全性
坂口 太一
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2024 年 53 巻 4 号 p. 163-168

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抄録

2018年の保険償還後,肋間開胸低侵襲心臓手術(Minimally Invasive Cardiac Surgery: MICS)の実施件数が急速に増加しつつあるが,同時にMICS関連合併症が社会的に注目されている.そこで,国内のMICSの安全性,特に心筋保護に関して,日本低侵襲心臓手術学会(J-MICS)が行ったアンケート調査結果に文献的考察を加えて報告する.回答が得られた97施設において,僧帽弁MICSにおける心筋保護液(CP)の種類は,血液CPが60施設,晶質性CPが21施設,両者の混合が16施設であった.投与間隔を30分以上に設定している施設は,del Nido液以外の血液CPで6%,晶質性CPで44% であった.右冠動脈への空気塞栓予防のため,大動脈基部の空気除去をCP追加投与時に行っている施設は94% で,僧帽弁逆流試験時に行っている施設は72% であった.日本心臓血管外科手術データーベース(JCVSD)によれば,僧帽弁MICSは正中切開と比較して手術時間は30分長くなるが,周術期心筋梗塞を含めた術後合併症発生率は同等であった.J-MICSでは,2024年からMICSレジストリーを開始し,横隔神経麻痺,片側性肺水腫,下肢虚血などMICS特有の合併症の発生頻度について,アニュアルレポートとして公表する予定である.2022年に導入されたMICS認定医・指導医制度も活用しながら,学会主導によるMICSの安全な普及を目指している.

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