日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
原著
腹部大動脈瘤切除術後の腎動脈下残存大動脈の経時的変化
村岡 拓磨上西 祐一朗篠永 真弓倉岡 節夫
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 53 巻 4 号 p. 174-178

詳細
抄録

[背景]腹部大動脈瘤(AAA)開腹手術において,欧米のガイドラインでは中枢吻合をできるかぎり腎動脈に近いところで行うことが推奨されているが,日本のガイドラインには記載がない.[目的]低位腎動脈下残存大動脈(Infrarenal Residual Aorta; IRA)の長さと遠隔期の拡大の関連性を検討した.[方法]2002年6月~2016年11月に当院でAAAに対して人工血管置換術を行った100例を対象とした.男性89例,平均年齢70.2±8.2(SD,以下同じ)歳,平均観察期間は8.5±3.3年であった.IRAの長さが2 cm未満のものをS群(n=24),2 cm以上のものをL群(n=76)として,術前の低位腎動脈下大動脈径および術直後,術後早期,中期,遠隔期でのIRAの長さと径を計測した.[結果]術前と術直後のIRA径に有意な変化はみられなかった.術前の低位腎動脈下大動脈径はS群23.0[21.0~26.0]mm,L群22.0[20.0~24.5]mmで有意差はなかった.術後早期以降の各期間におけるIRA径は,L群のみで22.0[20.0~26.0]mm,23.0[21.0~27.0]mm,24.0[22.0~28.0]mm,26.0[23.3~32.8]mmと術直後から有意な拡大を示した(p<0.01).また,有意差はなかったものの,術前の腎動脈下大動脈径が26 mm以上の群では術後中期以降により大きな拡大傾向がみられた.[結論]IRAの長さと術後IRA径の拡大に関連性が認められた.

著者関連情報
© 2024 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top