抄録
東京大学胸部外科に入院し,手術をうけた心臓弁膜症術前症例28例,術後症例55例,計83例(男女比53:30,年齢13~68歳平均49.3歳)を対象として自転車エルゴメータによる運動負荷試験を行った.対象症例のNYHA分類による重症度は,I度36例,II度35例,III度12例であった.これらについて,運動負荷量ならびに酸素摂取量を無酸素性作業閾値および最大運動負荷における正常予測値に対する達成率で検討した.運動負荷量と酸素摂取量の達成率は有意(p<0.01)の相関関係を示した.さらに,NYHAのI度,II度,III度の症例間には無酸素性作業閾値,最大値の双方において有意(p<0.01, p<0.01)の差を認めた.外科治療に伴い術後には運動負荷量の有意の増加を認めたが,この差は最大値において無酸素性作業閾値より明らかであった.本研究で用いた運動負荷試験は,心臓弁膜症症例の運動遂行能の評価方法として有用と考えられた.