1991 年 20 巻 9 号 p. 1528-1532
感染性心内膜炎に起因する僧帽弁瘤を経験し,手術で良好な結果を得た.症例は53歳,男性である明らかなリウマチ熱の既往はなかった.大動脈弁閉鎖不全症の診断のもとに内科治療を受けていたが,経過中に感染性心内膜炎を生じた.そのときはじめて,心臓超音波断層検査で僧帽弁前尖の異常エコー像を指摘された.当科に紹介入院ののち諸検査を行い,僧帽弁瘤の診断で開心術を施行した.手術所見では,大動脈弁は感染性心内膜炎のために高度に破壊されており,僧帽弁前尖は全体が瘤をなし左房側へ突出していた.二弁ともにSJM弁を用いて弁置換術を施行した.術後の病理組織検査では真性僧帽弁瘤の診断を得た.僧帽弁瘤は本邦では自験例を含めて22例の報告をみるにすぎない.僧帽弁瘤の術前診断には心臓超音波断層検査が有用であった.また治療法としては外科手術が必要であり,とくに穿孔をきたす以前に弁置換術を第一選択とすべきである.