抄録
症例は73歳, 男性. 主訴は右下腹部痛と血圧の低下であった. 腹部CT所見より, 腹部大動脈瘤の破裂と診断し, 緊急的にY型人工血管置換術を施行した. 術中所見では, 約1cmの穿孔を腹部大動脈の総腸骨動脈分岐部直上の後壁に認めた. 術後に後腹膜炎を合併し, また術中に採取した大動脈瘤内の血腫と, 術後の後腹膜腔ドレナージ液の培養から Bacteroides fragilis が検出された. 第10病日に, axillo-bifemoral bypass を作製し, Y型人工血管を摘除した. 以後, 後腹膜腔の持続洗浄を行ったが, 後腹膜の炎症は改善せず, 術後約2カ月で敗血症のため死亡した. Bacteroides 属による感染性腹部大動脈瘤は稀な疾患であり, その感染経路を推察し, 感染性腹部大動脈瘤の治療に関して若干の文献的考察を行った.