抄録
症例は59歳男性, 突然の背部痛により近医を受診し, 血管造影にて真性胸部下行大動脈瘤と左鎖骨下動脈から総腸骨動脈分岐部までの DeBakey IIIb型大動脈解離を認めた. また, 左総腸骨動脈は閉塞し, 左下肢の疼痛, チアノーゼが増強したためF-Fバイパスを行った. 3カ月後, 胸部大動脈瘤に対して人工血管置換術を行った. エントリーは瘤内に存在し, 解離は後壁側を中心に3/5周に及んでおり, 真性胸部大動脈瘤に解離を合併したまれな症例であった. 本症は破裂の危険性が高く, 積極的な外科治療が必要である.