日本心臓血管外科学会雑誌
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急性A型解離術後遠隔期における大動脈基部再解離
GRF glue使用後の2症例
菅原 由至今井 克彦河内 和宏岡田 健志渡橋 和政末田 泰二郎
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キーワード: 急性大動脈解離, 再解離
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2004 年 33 巻 1 号 p. 22-25

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抄録

Gelatin-resorcin-formalin (GRF) glueは急性大動脈解離の外科治療に広く使用されているが,近年,本剤の影響が示唆される遠隔期再解離が報告されている.われわれは,本剤使用後の大動脈基部再解離の修復に成功した2症例を経験したので報告する.症例1は57歳,男性であった.2年6ヵ月前に他施設でA型急性解離に対して弓部全置換術を施行されたが,中枢側吻合部の断端形成にこのglueが用いられた.術後2年目のCT検査で大動脈基部に解離の所見を認め,以後,偽腔が拡大傾向を示した.今回composite graftを用いた基部置換術によりこれを修復した.解離血管壁に認めた特異な変性所見が印象的であった.症例2は71歳,男性であった.3年前に当科でA型急性解離に対して緊急手術を施行した.右および無冠尖側のValsalva洞に解離が及んでいたので,この部分をGRF glueで閉鎖し大動脈弁の吊り上げ術を行ったのち,上行置換術を施行した.今回,無冠尖洞の再解離による大動脈弁逆流のため心不全を生じた.これを大動脈弁置換術により修復した.文献的検討より,大動脈弁吊り上げ術への本剤の使用は回避すべきであり,さらに本剤を用いて修復した急性解離症例にはとくに注意深いfollow upが必要と思われた.

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