日本心臓血管外科学会雑誌
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局所止血材の細胞毒性と組織親和性のin vitroおよびin vivo評価
冨澤 康子小森 万希子高田 勝美西田 博遠藤 真弘黒澤 博身
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2004 年 33 巻 6 号 p. 382-386

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抄録
外科手術中に使用する局所止血材が体内に留置されたのちの,吸収および治癒過程は材料,形態および環境により異なる.止血材の細胞毒性および組織親和性を評価した.止血材はSurgicel®,Spongel®,Avitene®およびIntegran®の4種類を用いた.1)培地のpH測定,2)培養ヒト線維芽細胞への影響,3)観察窓(REC)モデルで評価した.1)培地のpH:72時間後にはSurgicelを含む培養液のみが7.2,ほかの止血材および対照は7.7~7.8であった.2)細胞への影響:培養1日後にはSurgicel周囲の細胞が脱落し,2日後にその範囲が拡大し,5日後に止血材が置かれていた場所の細胞密度が低下した.ほかの止血材および対照では同様の変化はみられなかった.3)組織治癒:Surgicelの1週間後は炎症反応が強く,2週間後には侵入血管を認めたが,溶解後の残渣があり,5週間後にもまだ残渣があり,REC内の血管は完成せず,周囲の細小血管は減少していた.5週間後にAviteneでは浸出液を伴った残渣はあっても周囲の血管数は減らず,Surgicel以外では炎症反応は強くなかった.多用している止血材のなかには細胞の増殖を抑え,治癒を遅延させる可能性がある製品が存在する.また,細胞親和性が良好だとされている止血材でも留置する量をわずかにし治癒を妨げない配慮が肝要である.
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