2006 年 35 巻 2 号 p. 114-117
症例は51歳,男性で,平成15年10月,労作時息切れのため受けた心臓超音波検査で大動脈弁閉鎖不全症が4年前に比べて進行していたため,手術目的で当科入院となった.小児期より数回の骨折歴あり,身長は146.0cm,体重は49.0kgで青色強膜を認めたので,骨形成不全症と診断されていた.血液・凝固系に明らかな異常はなかった.心臓超音波検査では,大動脈弁左冠尖の逸脱が逆流の主たる原因で,バルサルバ洞は軽度拡大していた.大動脈弁置換術(SJM25mm)を施行した.胸骨および軟部組織は通常に比べ脆弱な印象であった.大動脈弁は全体に菲薄化した弁尖で,病理組織学的所見(Elastica-Masson染色)では,弁尖および左室心筋で弾性線維肥厚が著明であった.術後経過は良好であった.骨形成不全症に心・血管疾患の合併することは希であるが,手術による死亡率が約30%と高い.術後21ヵ月目に心不全で死亡した例の報告もあり,今後注意深い観察を必要とする.