2006 年 35 巻 2 号 p. 122-125
症例は4年前に大動脈弁置換術を施行された67歳,男性.胸部CTで胸骨裏面に接する直径10cmの偽腔開存型解離性上行大動脈瘤を認めたため手術となった.胸骨再正中切開や瘤周囲剥離中の大出血とこれに関連した脳血流確保が問題であった.両側総頸動脈を頸部で露出して脳分離体外循環に備え,大腿動静脈からの部分体外循環下に胸骨再正中切開・縦隔内剥離を行った.胸骨再正中切開は問題なかったが,大動脈弓部や上行大動脈頭側が高度癒着のためにまったく剥離できなかった.血液温を23℃に冷却し,両側総頸動脈からの脳分離体外循環下に大動脈基部を切開した.解離のentryは大動脈弁置換術時の大動脈切開部右半分で,これをePTFEパッチで閉鎖した.MRSA肺炎などのため長期入院となったが,術後14ヵ月目の現在,元気に通院している.