歯科材料・器械
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原著
光重合型コンポジットレジンの重合率分布
野本 理恵原嶋 郁郎平澤 忠
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1991 年 10 巻 1 号 p. 161-170

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抄録
フーリエ変換赤外分光光度計を使用して光重合型コンポジットレジン硬化体から切り出した薄切片における微小部位の赤外吸収スペクトルを連続的に測定し, 硬化体の照射口光軸に沿った深さ方向の重合率分布を求め, 微小硬度計で測定したヌープかたさ分布と比較した.1)SiluxおよびPalfique Lightの重合率は光照射面から約1mmの深さまで, 深くなるにしたがって高くなり, 深さ1mm付近で最大値を示し, 以後深くなるにしたがって低下した.2)P-30の重合率は光照射面直下でわずかに低く, 光照射面下0.4mm付近から硬化深さの4〜5割の深さまで約70%とほとんど変化せず, 以後深くなるにしたがって低下した.3)SiluxおよびPalfique Lightでは, 照射時間を長くするにしたがって最大重合率は高くなったが, P-30では20秒以上照射しても最大重合率は約70%と変化しなかった.4)酸素による重合抑制作用は, どの材料も表面下約1.0mmの深さまで認められた.5)ヌープかたさと重合率との関係はどの材料においても比例関係が成立した.直線の傾きは無機質フィラー含有量に影響されると考えられ, Silux, Palfique Light, P-30の順に大きくなっていた.以上の結果から無機質フィラー含有量の高いコンポジットレジンでは重合率がわずかに変化してもヌープかたさに大きく影響することがわかった.
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© 1991 一般社団法人 日本歯科理工学会
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