抄録
無血清培養下における生体材料の細胞毒性試験をめざして, 主な歯科用高分子材料のモノマー5種類, すなわちMMA, TEGDMA, Bis-GMA, UDMAおよびHEMAのL-929細胞に対する影響を, ニュートラルレッド法による細胞生存率に基づいて調べた.また血清濃度の影響についても検討した.その結果, 無血清培養下ではBis-GMAで50%細胞阻止濃度(IC50)が4.2μg/mlと最も低く, 逆にMMAで8, 992μg/mlと最も高かった.IC50から求めた各モノマーの細胞毒性は, 強い方からBis-GMA>UDMA>TEGDMA>HEMA>MMAとなった.一方, 1, 5および10%の3段階に設定した血清添加の影響についてみると, 各モノマーのIC50は血清濃度の低下とともに低濃度側にシフトしたが, 3段階の血清添加条件間でのデータでIC50順位の逆転は認められなかった.細胞毒性は強い方からBis-GMA>UDMA>HEMA>TEGDMA>MMAとなり, 無血清条件と比較するとHEMAとTEGDMAで順位が逆転していた.また, 血清添加条件では無血清条件に比較して各モノマーのIC50は, 2.4倍から最大で35倍の範囲で高濃度側へ位置していた.以上の結果より, 細胞培養を行う上から必要な血清がモノマーの細胞毒性発現に影響を及ぼすことが明らかとなった.したがって, モノマー自体の毒性と in vivoにおける細胞毒性を知る上で, 無血清培養下における細胞毒性試験法は1つの有効な方法であることがわかった.