歯科材料・器械
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超弾性Ti-Ni合金キャストクラスプの維持力の検討
小竹 雅人
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1994 年 13 巻 5 号 p. 459-466

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抄録
超弾性Ti-Ni合金に着目し, この合金の持つ超弾性特性をキャストクラスプとして応用することを目的として本研究を行った.従来の歯科用合金と性質比較するために, 超弾性Ti-Ni合金と, コバルトクロム合金, 金銀パラジウム合金, それに最近注目されているチタンについて, もっとも一般的なレスト付き2腕鉤の繰り返し着脱試験による維持力の測定を行った.繰り返し着脱試験から得られた, 変位に対するクラスプに掛かる荷重の変化曲線は, 超弾性Ti-Ni合金クラスプでは, アンダーカット0.25mm, 0.50mmいずれも1回目と1, 000回目の着脱過程ではほぼ同じ曲線を示した.従来から歯科用に使用されている, コバルトクロム合金, 金銀パラジウム合金それにチタンでは, 着脱回数により変位に対する荷重の変化曲線は大きく変化した.クラスプが示した最大維持力と着脱回数については, 超弾性Ti-Ni合金クラスプでは, 着脱回数に関わらず, 維持力はほとんど変化しなかった.対照として用いたコバルトクロム合金, 金銀パラジウム合金およびチタンによるクラスプは, 着脱の回数が増加するにしたがって, 維持力の減少が認められた.これらの結果から, Ti-Ni合金は, キャストクラスプに応用した場合, 超弾性特性により, 患者による義歯の不用意な取り扱いや繰り返し着脱によるクラスプの永久変形, 破折を今まで以上に防止できると考えられ, 従来にない設計が可能であると考えられる.
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© 1994 一般社団法人 日本歯科理工学会
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