1998 年 17 巻 4 号 p. 238-246
3種の従来型および3種の光硬化型グラスアイオノマーセメントの歯質接着における試作前処理剤<フィチン酸-SnF_2>プライマーの処理効果を評価した.この前処理剤は二段階の処理を必要とする.まず, 7%フィチン酸水溶液により処理後, 水洗, 乾燥し, 次に, 3%のフッ化第1スズ水溶液により処理後, 水洗, 乾燥する.この処理と7%フィチン酸処理のみ, およびメーカー指示に従って処理した牛歯象牙質およびエナメル質に対するアイオノマーセメントのせん断接着強さを測定し, 比較検討した.その結果, 5種のセメントにおいて, 本プライマーで処理した場合が最も高い接着強さが得られた.特に, 光硬化型で処理効果が高かった.サーマルサイクル500回負荷後も接着強さはほとんど低下しなかった.これらの結果から, 本プライマーの有効性が確認され, 歯質表面に固定されたスズイオンとセメント中のポリカルボン酸との間の何らかの化学的相互作用が接着に寄与していることが示唆された。