歯科材料・器械
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原著
合着用グラスアイオノマーセメントの経時的変化に関する研究
平野 義也
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1983 年 2 巻 6 号 p. 691-707

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抄録
市販の合着用グラスアイオノマーセメントを使用して圧縮強さ, 引張り強さ, 接着強さ, 寸法および重量変化について経時的な変化を測定し, またセメント表面のレプリカをSEMで観察し, 同時に市販のカルボキシレートセメントおよびリン酸セメントと比較検討した結果, 次のような結論を得た. 1.圧縮強さでは, フジアイオノマーが各測定日で最大値を示し, ケミボンドはリン酸セメントと類似の値を示した. 2.引張り強さでは, いずれの測定日においてもカルボキシレートセメントが最大値を示し, 次にフジアイオノマーそしてケミボンドとリン酸セメントは最も小さな値を示した. 3.接着強さでは, 30日までカルボキシレートセメントが最も大きな値を示し, 次にフジアイオノマー, ケミボンドそしてリン酸セメントの順であったが, 60日になると試供セメントはすべて類似の値となった. 4.寸法変化については, 乾燥状態ではグラスアイオノマーセメントはカルボキシレートセメントと類似の収縮率を示したが, 浸水状態ではグラスアイオノマーセメントのみ膨潤した. 5.重量変化については, 乾燥状態ではグラスアイオノマーセメントはカルボキシレートセメントとリン酸セメントの中間減少率を示したが, 浸水状態ではカルボキシレートセメントやリン酸セメントと比較して, 数倍もの大きな増加率を示した. 6.グラスアイオノマーセメント表層のSEM所見から, 練和開始1時間後に観察された小さな亀裂は, 乾燥1日後では大きく深くなるが, 浸水1日後では消失した.
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© 1983 一般社団法人 日本歯科理工学会
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