抄録
二酸化チタン(TiO2)のルチル,アナクーゼ,ブルッカイトの3種類の同素体中,結晶構造が最も安定で日常的に頻繁に用いられているルチル型TiO2を生体材料として応用するために,その生体親和性の評価を行った.1300,1400,1500℃とその焼成温度の異なる(3種類の)円盤状のルチル型TiO2を作製後,その表面粗さの測定,X線回折および走査型電子顕微鏡(SEM)像による表面性状の観察を行った.さらに各試料上でのマウス線維芽細胞L929の増殖を評価した.各焼成温度におけるTiO2の表面性状は,焼成温度が高くなるにつれて滑沢になり,表面粗さは有意に低下した.各試料上でL929細胞は対照群と比較して,すべての焼成温度で有意に増殖した.ルチル型TiO2はL929細胞に対し良好な親和性を示した.