抄録
陶材の主な物性である熱膨張係数(13.5×10-6℃)および透明度の安定性を,ガラス粉末(組成:SiO2 64.1, Al2O3 15.0, K2O 10.3, Na2O 8.5, MgO 0.3, CaO 1.2, B2O3 0.6wt%)の熱処理(850℃)に伴うリューサイトの生成とそのサニディンヘの転移挙動について研究し,以下の結果を得た.1.陶材中のリューサイトは準安定相で,誘導期間(約10時間)を経てサニディン(安定相)へ転移した.2.陶材の熱膨張係数および透明性は,リューサイトからサニディンヘの転移量の増大に伴って大きく減少した.3.合成リューサイト粉末(1wt%)を混合したガラス粉末で調製した陶材は,その熱膨張係数と透明性が4時間までの熱処理(850℃)によって変化しなかった.即ち,市販陶材(800〜950℃では1時間以内にリューサイトはサニディンへ転移開始)と比較して技工作業での安定性を約4倍に改善できた.