抄録
接着修復において接着層形成時および形成後に介在する水は接着を左右する重要な因子である.接着層の耐久性向上を目的として,4-META(ME)またはMDPを含むHEMA-エタノールベース試作セルフエッチングプライマーに2種フッ素化合物(sodium1-[(4-heptadecafluorooctyl)phenyl]-1-butyl-phenyl phosphate:FH3,2,2,2-trifluoroethyl methacrylate:3FMA)を添加して,1年水中保管ならびにサーマル試験後の接着強さを測定し,その有効性を評価した.エナメル質接着では,両接着性モノマーともフッ素化合物添加による有効性は認められなかった.一方,象牙質接着では,FH3添加群では有効性は認められなかったが,3FMAを0.5〜5wt%添加したME含有プライマーでは,経時的に安定した接着が維持された.SEM観察では,全ての試料で明瞭な樹脂含浸層は観察されなかった.以上の結果から,3FMAはME含有セルフエッチングプライマーの象牙質接着の耐久性を向上させる有望なモノマーであることが示唆された.