1986 年 5 巻 4 号 p. 497-505
単純化された歯科フルクラウン鋳造体の, 凝固時における温度変化を有限要素法によりシミュレーションした結果, 以下の結論を得た.1)鋳造体におけるニッケルクロム合金と, 金銀パラジウム合金の凝固過程には大きな違いが存在する.2)ニッケルクロム合金の凝固時には, その部位により大きな温度差がある.この温度差は, ニッケルクロム合金の凝固区間における熱伝導率が低いことに原因している.3)凝固時における, 金銀パラジウム合金鋳造体の温度は, 部位によらずほぼ一様である.4)薄いニッケルクロム鋳造体の場合には, 部位による温度差は極端に増大する.5)有限要素法による歯科鋳造の凝固過程に対するシミュレーションは有効である.