発達心理学研究
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幼児期における心の理論発達の個人差, 感情理解発達の個人差, 及び仲間との相互作用の関連
森野 美央
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2005 年 16 巻 1 号 p. 36-45

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抄録

本研究では, 幼児期における心の理論発達の個人差, 感情理解発達の個人差, 及び仲間との相互作用の関連を検討した。年少, 年中, 年長児144名には, 心の理論課題, 感情理解課題を行い, 保育士には, 担当児の社会的スキルと人気に関する評定を依頼した。その結果, 月齢や言語能力が同程度である場合, 心の理論が発達している者ほど感情理解も発達している傾向にあることが確認された。学年ごとの分析の結果, この傾向は, 特に年中や年長でみられることが確認され, 年長では, 心の理論が発達している者ほど社会的スキルも高いという傾向が確認された。また, 有意傾向であったものの, 年中では, 心の理論が発達している者ほど社会的スキルも高いという傾向が確認され, 年長では, 心の理論が発達している者ほど人気もあるという傾向が確認された。このような傾向は, 感情理解が発達している者にはみられなかった。本研究の結果から, 心的状態の理解の発達は単一なものではなく, 心の理論発達と感情理解発達の異なった側面が存在する可能性や心の理論発達の個人差と仲間との相互作用の関連が学年によって異なる可能性が示唆された。

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© 2005 一般社団法人 日本発達心理学会
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