発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
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原著
  • 佐藤 佑貴, 金澤 潤一郎
    2018 年 29 巻 3 号 p. 105-113
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/09/20
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,わが国と海外では異なる養育スタイルを示すという結果に基づき,母親のADHD症状と養育スタイルの関連性について,感情調節困難の媒介効果を明らかにすることであった。ADHD症状には連続性が仮定されており誰もが持っている特性であることが指摘されているため,幼稚園,小学校に通う子どもをもつ母親179名を対象とした。媒介分析の結果,母親のADHD症状は感情調節をより困難にすることにつながり,その結果として肯定的働きかけが減少し,叱責が増えるという結果が示された。また,感情調節困難の下位因子ごとにおける母親のADHD症状と養育スタイルの媒介分析を実施した結果,肯定的働きかけと叱責では関連する要因が異なることが明らかになった。ADHD症状のある母親への支援ではペアレントトレーニングを単独で実施するのではなく,ADHDへの対処法を追加したペアレントトレーニングの実施が推奨されている。本研究の結果から,感情調節困難が養育スタイルと関連することが明らかになったため,ペアレントトレーニングに追加するADHDへの対処法の1つとして感情調節困難の改善が考えられる。

  • 赤木 真弓
    2018 年 29 巻 3 号 p. 114-124
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/09/20
    ジャーナル フリー

    本研究では,大学生の女子を対象とし,母娘関係と娘のアイデンティティ形成,精神的健康との関連について検討した。母親と娘の関係性を多角的に検証するための尺度を作成し,その下位尺度を用いてクラスタ分析を行った結果,「反発群」「親密群」「自立群」「葛藤従属群」に類型化された。得られた類型について,分離と結合,および精神的健康の視点で分析した結果,「自立群」が健康な分離タイプ,「反発群」が不健康な分離タイプ,「親密群」が健康な結合タイプ,「葛藤従属群」が不健康な結合タイプとなった。さらに,アイデンティティ達成が高かったのは「親密群」と「自立群」で,どちらも母親からの押し付け,母親への劣等感が低かった。逆に,アイデンティティ達成が低かったのは「反発群」と「葛藤従属群」で,どちらも母親からの押し付け,母親への劣等感が高かった。以上のことから,娘のアイデンティティ形成および精神的健康にとって重要なのは,母親との分離か結合か,ということではなく,母親からの押し付けや母親への劣等感を感じない母娘関係であることがあきらかになった。

  • 浜名 真以
    2018 年 29 巻 3 号 p. 125-132
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/09/20
    ジャーナル フリー

    幼児期を通して,子どもは特定の状況でどのような感情を経験するかを理解する感情推論の能力を発達させていく。先行研究から,幼児は感情の経験主体が他者である場合よりも自己である場合の方が,ネガティブな状況に対してポジティブな感情を推論することが示されている。本研究では被害場面を取り上げ,他者条件(被害者が他者である場合)に比べ自己条件(被害者が自己である場合)の方が,状況の解釈において幼児がより楽観的な評価をするか,ネガティブな状況において推論するネガティブ感情の強度をより低く評価するかを検討した。参加者は4歳から6歳の幼児56名であった。自己条件と他者条件のストーリーを聞かせ,それぞれについて加害者の敵意,被害者にとっての困難度,被害者の復元能力,被害者が経験するネガティブ感情の強度を評価させた。分析の結果,先に自己条件,その後で他者条件について尋ねた場合,他者条件に比べて自己条件において,幼児は加害者の意図を好意的に評価することが明らかとなった。さらに,他者条件に比べて自己条件において,被害者にとっての困難度をより低く評価すること,被害者の復元能力をより高く評価すること,その状況で被害者が経験する感情強度をより低く評価することも明らかとなった。これらの結果から,幼児期の状況の評価と感情推論の関連が示唆された。

  • 中田 龍三郎, 久保(川合) 南海子, 岡ノ谷 一夫, 川合 伸幸
    2018 年 29 巻 3 号 p. 133-144
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/09/20
    ジャーナル フリー

    怒りを構成する要素である接近の動機づけが高まると,前頭部の脳活動に左優勢の不均衡状態が生じる。この不均衡状態は怒りの原因に対処可能な場合に顕著になる。これらの知見は主に脳波を指標とした研究で示されてきた。本研究では近赤外線分光法(NIRS)を用いて,脳活動に左優勢の不均衡状態が生じるのか高齢者と若齢者を対象に検討した。ドライビングシミュレータを運転中に渋滞する状況に遭遇した際の脳血流に含まれる酸化ヘモグロビン量(oxy-Hb)を測定したところ,高齢者では左右前頭前野背側部で左優勢の不均衡状態が顕著に認められたが,若齢者では認められなかった。自動的に渋滞状況と同じ速度にまで減速する条件では高齢者と若齢者の両者の脳活動に左優勢の不均衡状態は認められなかった。この結果はNIRSでも接近の動機づけの高まりと相関した脳活動の不均衡状態を測定可能であることを示しており,高齢者は思う通りに走行できないという不快な状況(渋滞条件)において,明確な妨害要因の存在が接近の動機づけ(攻撃性)を高めると示唆される。接近の動機づけ(攻撃性)には成人から高齢者まで生涯発達的変化が生じており,その結果として高齢者は若齢者よりも運転状況でより強い怒りを生じさせる可能性がある。

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