抄録
本研究では, 青年期の社会的スキル改善意欲の高さに関連のある要因の検討, および社会的スキル改善意欲と社会的スキル改善の間の関連の検討を行った。研究1では, 大学生401名を対象に社会的スキル, 社会的スキル改善意欲, 自己形成意識, 自尊感情, 対人志向性, 友人関係形態の理想と現実の測定を質問紙により行った。その結果, 社会的スキル改善意欲は, 自己形成意識, 対人志向性と正の関係があり, 社会的スキル, 自尊感情と負の関係があることがみいだされた。また, 友人関係形態の理想と現実が一致していない者は, そうでない者に比べて社会的スキル改善意欲が高いことがみいだされた。研究2では, 研究1の調査協力者のうち253名を対象に期間をおいて調査を行い, 社会的スキル改善意欲, 先行する性格特性, 友人関係形態の変化と社会的スキル改善の関連の検討を行った。因子分析の結果, 社会的スキルの下位分類として, 「関係開始スキル」「関係調整スキル」「内的葛藤処理スキル」がみいだされた。「関係開始スキル」および「内的葛藤処理スキル」に関しては, 該当する社会的スキル改善意欲と社会的スキル改善の間に正の関連がみられ, 社会的スキル改善意欲を持つことによる社会的スキル改善が可能であることが示唆された。「関係調整スキル」に関しては関連がみられず, 社会的スキル改善意欲を持つだけでは社会的スキル改善が困難であることが示唆された。