発達心理学研究
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中高年期における主観的老いの経験
若本 純子無藤 隆
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2006 年 17 巻 1 号 p. 84-93

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抄録

本研究は,30-75歳の成人2026名を対象に質問紙調査を実施し,「身体の不調」「心理社会面の減退」「志向の転換」「余裕と成熟」の4領域からなる主観的老いの経験について検討した。まず,非線形正準相関分析を用い,内的・外的要因と老いとの関連から老いの性質を検討した。第1次元では老いのポジティブ面と加齢との関連,第2次元では衰えと心理面・経済面のネガティブな状態との関連,第3次元では「志向の転換」と心理的要因との関連が示され,老いの各領域は独立した構造と過程を有することが示唆された。中でも第3次元において,男性では情緒不安定性,女性では自尊感情との関連が示され,心理過程の違いが注目された。続いて,主観的老いの経験の年齢差を検討した。老い4領域を従属変数とする分析結果(MANOVA)からは,老いが40代以降に顕著な発達的経験であること,「志向の転換」を除く老いは概ね加齢に伴い増すが,領域ごとに異なる年齢差の様相をもつことが明らかになった。加えて,老い4領域間の関連が年齢によって異なるかを効果量の検定によって検討した。その結果,「志向の転換」を含む相関において,中年後期と他の時期との間に有意差が見出された。また,中年後期は,老いのポジティブ面に伴う自己変容が生じる時期として位置づけられた。

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© 2006 一般社団法人 日本発達心理学会
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