発達心理学研究
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日本の中高年男性の失業における困難さ : 会社および社会との繋がりに注目して
高橋 美保
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2008 年 19 巻 2 号 p. 132-143

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抄録

本研究は,平成不況下でリストラに遭った日本の中高年男性を対象に,なぜ彼らの失業が困難になるのかを検討することを目的とした。1990年代後半以降に非自発的失業を経験した10名の中高年男性を対象に2度にわたって半構造化面接による面接調査を実施し,さらに失業経験者を対象とするグループインタビューを行い,累計26のデータを収集した。本研究では,現在は失業状態を脱した中高年男性のレトロスペクティブな語りを元に,当事者の目線からその体験を理解することを試みた。特に,日本では就業時における会社および社会との繋が引こ特異性があると考え,分析に際しては"会社および社会との繋がり"に注目した。修正版M-GTAを用いて質的分析を行った結果,大きく3つのステージ(「I.会社への没入と喪失」「II.社会からの度重なる疎外体験」「III.社会との多面的な繋がりの構築」)からなる失業体験過程の仮説モデルが生成された。仮説モデルを元に,失業の困難が生じる要因として,以下の4つを指摘した。(1)会社との繋がりの強さ,(2)会社生活の喪失,(3)社会からの排除と孤立,(4)社会との繋がりの段階的喪失。最後に,失業の困難の体験がその後の生活に及ぼした影響についても考察した。

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© 2008 一般社団法人 日本発達心理学会
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