発達心理学研究
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食事場面における1〜3歳児と母親の相互交渉 : 文化的な活動としての食事の成立
外山 紀子
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2008 年 19 巻 3 号 p. 232-242

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抄録

1〜3歳児とその母親44組を家庭訪問し,食事場面を観察した。内訳は1歳児15名,2歳児15名,3歳児14名であった。すべての発話を転記し,カテゴリー分類を行い,母子の相互交渉を検討した。食具を使って食べる技能は,加齢とともに発達していった。1歳児はほとんど母親に食べさせてもらっていたが,3歳児はほぼ自分で食具を使って食べていた。1歳児では,子どもが食物を食べることにあわせた定型的なやりとり(ルーティン)が頻繁に認められた。母子の相互交渉は,子どもの食欲の有無によっても相違があった。子どもが咀嚼していない時には,母親は子どもの"おしゃべり"に応答せず,摂食へと注意を促すことが多かった。母親は子どもが咀嚼しているかどうかによって,モノの構成と配置を調整することも認められた。子どもが咀嚼している時には,子どもの前に食物や食具を置き,子どもの自由になる領域を拡大させたが,子どもが咀嚼していないときには,その領域を縮小させることが多かった。

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© 2008 一般社団法人 日本発達心理学会
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