発達心理学研究
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多数決の適用についての判断の発達 : 日本とイギリスとの比較研究
木下 芳子
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2009 年 20 巻 3 号 p. 311-323

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抄録

児童および生徒が,多数決を適用してもかまわない状況と多数決の適用は問題である状況について理解しているかどうかを日本とイギリスの児童・生徒および大学生を対象に調べた。両国とも小学校3年,6年および中学校2年の児童・生徒と大学生の年齢群で合計240人が調査に参加した。参加者はあるクラスで種々の問題について討議し,決定をしようとしているという設定で,13の仮説的場面について,多数決で決めてもかまわないかどうか判断し,その理由を述べるように求められた。結果として,両国とも3年生でも概ね多数決を適用してよい場面と適用が問題である場面の区別がついていること,年齢が上になるほど区別は明確になることがあきらかになった。また,多数決の適用の判断に当たっては,国による違いもみられた。イギリスのほうがより課題解決的で,多数決を是認することが多かった。また,日本ではイギリスより感情的反応が多いことなどが示された。判断には,それぞれの国の価値観や社会的決定に対する態度が反映されていることが示唆された。これらの結果は,これまでの比較文化的研究の結果に照らして討論された。

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© 2009 一般社団法人 日本発達心理学会
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