抄録
布置参照枠は,抽象的で柔軟な空間表象を形成するための空間的参照枠として,近年注目されつつある。本研究では,布置参照枠の利用の発達を,探索がどの参照枠に基づいたものであるかを正確に推定できるように設定を工夫した再定位課題を用いて検討した。4歳児18名,5歳児29名,6歳児28名に,長方形の箱の四隅の1つに対象を隠すのを見せた後,定位を喪失させ,先ほどの対象を探し出させる課題を4試行実施した。その結果,4-5歳児は布置参照枠を十分に利用することができず,誤った探索は環境参照枠に基づいたものが多いこと,4-5歳児では試行によって異なる参照枠を利用する者が多いが,6歳児になると布置参照枠の利用の一貫性が高くなること,その一方で,6歳児でも厳密に布置参照枠に基づいた探索を行っていないこと,が明らかになった。以上の知見から,布置参照枠の利用は4-5歳から徐々に可能になるが,それが洗練されるのは6歳以降であると考えられた。