発達心理学研究
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発達障害のある外国人児童への社会的相互作用トレーニングの効果 : 実行機能に注目した共同パズル完成課題
栗田 季佳前原 由喜夫清長 豊正高 信男
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2012 年 23 巻 2 号 p. 134-144

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抄録

近年,実行機能は発達障害,特にADHDのトレーニングに重要な概念として注目されているが,社会性の改善に関しては明確なトレーニング効果が確認されていない。本研究は,外国人のADHD児を対象に社会性向上のトレーニングとして,対人場面における実行機能に注目し,共同パズル完成課題を実施した。共同パズル完成課題では,2人で2種類のパズルに取り組み,協力して完成させることを心掛けるよう教示する。この課題は単純にパズルを完成させるだけでなく,他者を視野に入れた行動調整を必要とし,その点で対人的・情動的要素を含む実行機能の使用を要求する課題だといえる。課題はADHDの外国人児童2名に2か月間継続的に実施した。その結果,両児童の協力行動の増加と,離席行動の減少という改善がみられた。しかしながら,実行機能課題の成績はこのトレーニングによって改善しなかった。これらの結果は,実行機能が単一の構成体ではなく,社会性に関わる情動的実行機能と純粋な認知的問題の解決を担う認知的実行機能に機能的に弁別されるという近年の知見を支持している。社会性と実行機能の関係について,また,在日外国人の発達障害への介入について議論した。

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© 2012 一般社団法人 日本発達心理学会
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