発達心理学研究
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乳児期における絵本共有が子どもに対する母親の働きかけに及ぼす効果 : 絵本共有時間を増加させる介入による縦断的研究から
佐藤 鮎美内山 伊知郎
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2012 年 23 巻 2 号 p. 170-179

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抄録

本研究では,生後9ヶ月児とその母親を対象に,絵本共有時間を3ヶ月間操作的に増加させた絵本群,および特に教示を与えない統制群を設定し,絵本共有増加期間前後における両群の母子相互作用を自由遊び場面において観察した。それにより,絵本共有が子どもに対する母親の働きかけに及ぼす効果を,縦断的に検討することを試みた。その結果,絵本群では,母親の子どもに対する賞賛および子どものほほえみの頻度が統制群に比べて増加することが示され,絵本共有により母親の子どもに対する敏感な働きかけが増加する可能性が示唆された。さらに絵本群において,子どもがほほえみながら母親を見上げる頻度が統制群に比べて増加することが示され,絵本共有によって子どもの感情共有が促される可能性が見出された。これらの結果から,絵本共有時間の増加によって,母親および子どもの行動が変容することが実証的に示唆され,絵本共有が母子関係の質を向上させるメカニズムの一端が明らかにされた。

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© 2012 一般社団法人 日本発達心理学会
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