2015 年 26 巻 1 号 p. 35-45
本稿では自閉症スペクトラム障害(ASD)児・者におけるユーモア体験の特性について,構造的不適合の評価と刺激の精緻化の視点から,思春期・青年期のASD児・者19名と定型発達児・者46名を対象に検討した。検討の結果,定型発達児・者において概念レベルの構造的不適合とスキーマレベルの構造的不適合との間でユーモア体験の強さに差が見られたのに対して,ASD児・者において概念レベルの構造的不適合とスキーマレベルの構造的不適合との間でユーモア体験の強さに差は見られないことが明らかになった。この結果の背景として,ASD児・者における弱い中枢性統合の特徴による概念レベルの構造的不適合の評価の困難さ,スキーマレベルの構造的不適合における因果関係の自発的な推測,それぞれの構造的不適合における刺激の精緻化のしやすさの影響があることが考えられた。また刺激の精緻化については,ASD児・者は定型発達児・者に比べてスキーマレベルの構造的不適合において非社会的な情報に関する推測を多く行うことが明らかになった。