発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
原著
自閉スペクトラム症者における「気まずさ」の認識に関する探索的研究
滝吉 美知香鈴木 大輔田中 真理
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2017 年 28 巻 2 号 p. 63-73

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抄録

本研究は,社会性の発達において重要な指標となる「気まずさ」の認識について,典型発達(TD)者の発達段階,ならびに自閉スペクトラム症(ASD)者の特徴を明らかにすることを目的とした。TD者214名とASD者111名に「あなたが“気まずい”と感じるのはどういうときですか」と質問し回答を12のカテゴリーに分類し分析した。TD者において,小学生は自己の信念や感情が他者のそれとは異なることへの気づきにより生じる気まずさ(不都合,想定外の言動,ネガティブ感情,感情のズレ),高校生は生活空間や人間関係の広がりにより認識されやすい気まずさ(性・恋愛,他者の存在)に,それぞれ言及しやすいことが示された。ASD者においては,会話で共有される話題や雰囲気を瞬時に把握したり,自分と対照させて関係性をとらえることで引き起こされる気まずさ(雰囲気を乱す,他者の存在)について,年齢発達に伴う認識の増加が示されず,高校以上における言及率がTD者よりも少ないことが示された。また,自分が何をすべきかわからないときや対処できないときに言い出せない気まずさ(不都合)や,失敗に対する気まずさ(想定外の言動)の認識が多いことが示された。ASD者の気まずさ認識の特徴と発達について,TD者と比較検討し,ASD者の気まずさの認識に添った対人関係支援について考察した。

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© 2017 一般社団法人 日本発達心理学会
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