発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
原著
一般小中学生におけるASD特性と運動能力及び心理社会的適応との関連
中島 卓裕伊藤 大幸村山 恭朗明翫 光宜髙柳 伸哉浜田 恵辻井 正次
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2022 年 33 巻 1 号 p. 40-50

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抄録

本研究の目的は,一般小中学生における運動能力を媒介とした自閉スペクトラム特性と心理社会的不適応(友人関係問題,抑うつ)の関連プロセスを検証することであった。小学4年生から中学3年生の5,084組の一般小中学生及び保護者から得られた大規模データを用いて検討を行った。パス解析の結果,ASD特性が高いほど運動能力の苦手さがみられることが明らかとなった。また,ASD特性と抑うつとの関連においては26%が,ASD特性と友人関係問題の関連については小学生で25%,中学生で16%が運動能力を媒介した間接効果であったことが示された。これらの関連においていずれの性別及び学校段階においても有意な効果の差は見られなかったことから,性別及び学校段階によらず心理社会的不適応に対して運動能力が一定の寄与を果たしていることが示唆された。本研究は代表性の高い一般小中学生のサンプルでASD特性と運動能力,心理社会的不適応の連続的な関連を定量化した本邦初の研究であり,今後のインクルーシブ教育推進のための政策・実践の基礎となる重要なデータを提供するものである。

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© 2022 一般社団法人 日本発達心理学会
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