2024 年 35 巻 4 号 p. 227-239
本研究では,家庭における絵本・本の読み聞かせの量や質,読み聞かせの開始時期と,幼児におけるかな文字の読み能力と情動理解能力との関連について明らかにすることを目的として,年少から年長クラスの未就学児とその保護者を対象とした調査を実施した。データ収集はすべてオンラインで行われた。保護者は,家庭における対象児への読み聞かせの実態などについてアンケートフォーム上で回答し,対象児は保護者のみによるサポートと監督のもと,スクリーン上に呈示される画像や動画を視聴した上で,かな文字読み課題および情動理解課題に回答した。最終的な分析対象となった305ペアの子と保護者の回答データを分析した結果,子どもの月齢による影響を統制してもなお,家庭における読み聞かせの習慣と子どものかな文字読み能力,情動理解能力に関連があることが示された。かな文字読み課題に対しては1週間あたりの読み聞かせの日数が中程度の有意な正の関連を示した一方,情動理解課題に対しては読み聞かせの質が中程度の有意な正の関連を示した。これらの結果から,読み聞かせの量と質それぞれが,幼児の発達の異なる側面に対して促進的に作用する可能性が示唆された。
【インパクト】
研究の問題設定においては,家庭における読み聞かせと子どもの発達の関連について,これまで知見の乏しかった日本の幼児を対象とした点,発達をリテラシー(かなの読み能力)と社会情緒的スキル(情動理解能力)の両面から検討した点に大きな学術的意義がある。結果においては,読み聞かせの量と質が子どもの発達とそれぞれ異なる関連の仕方を示した点で学術的,実践的インパクトが大きい。