発達心理学研究
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母子相互作用における内的状態への言及 : 場面差と母親の個人差
園田 菜摘無藤 隆
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1996 年 7 巻 2 号 p. 159-169

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抄録

本研究では, 51組の2, 3歳児とその母親の内的状態への言及について, 場面差と母親の個人差による検討を行った。各家庭で, ごっこ遊び, 本読み, 食事の3場面での母子相互作用の観察を行い, インタピューと質問紙で母親の個人差を測定した。その結果, 内的状態への言及にはかなりの場面差があることが示された。ごっこ遊びは母親が感情状態に言及しやすく, 本読みは母子ともに思考状態に言及しやすく, 食事は母親が欲求に言及しやすい場面であることが明らかになった。また母親の個人差についても, 母親には内的状態への言及しやすさという個人差があり, その個人差は子どもとの相互作用においても反映することが示された。さらに, 内的状態に言及しやすい母親の子どもは内的状態に言及しやすい, という子どもへの影響も見られた。このことから, 子どもが内的状態への理解を発達させていく目常生活の中で, どのような場面を経験し, どのような個人差を持つ母親と相互作用をしているのか, ということを考慮に入れる重要性が示唆された。

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© 1996 一般社団法人 日本発達心理学会
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