抄録
就職や結婚, 出産など対人的環境が大きく変る青年後期から成人期初期にかけて, Bowlbyの内的作業モデル(IWM)や過去から現在の対人的経験のとらえ方がどう変化するか(しないか)を縦断的データに墓づいて検討した。被験者は看護専門学校の卒業生で, 在学中に生育史のレポートを書き, 卒後4ケ月峙に質問紙に回答した者の内, その4年後にも回答した31名である。主な結果は次の通り:1) IWM, 各時期の適応感, エゴグラム, 両親の養育態度の認知とも, 青年後期と成人期初期の2時点問の相関係数は・5から.8台が多く, 4年問を経ても安定性はかなり高い。2)しかしIWMとの関連の仕方は2時点で必ずしも同じではなく, 全体的に青年後期はアンピバレントな傾向とのマイナスの相関が高かったのに対し, 成人期初期は回避傾向との相関が高くなる傾向が見られる。3) IWMの安定一一不安定さは4年を経ても変化がない場合が多く(特に中程度から不安定な場合), 順位の変化も少ないが, 変化する場合もある。変化があったケースと変らないケースを個々に検討したところ, 仕事や私生活の好調さ, 現在の適応感, エゴグラムの現実性などとの関連が見られた。信仰をもったこと等により安定性得点が大きく上がった者がある一方, 青年後期に不安定であった者は(結婚したり, 親との関係が少しよくなった場合も)成人期初期においても不安定さに変りはなかった。