発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029

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児童期における愛着の測定:Child Attachment Interviewの妥当性の検討
向井 隆代小山 直子石井 礼花德田 若奈森 千夏
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論文ID: 35.0043

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抄録

児童期中期から青年期の愛着を評価する測定方法は確立されていなかった。Child Attachment Interview(CAI)は,児童期中期以降の愛着を評価するために開発された半構造化面接法であり,愛着を次元およびカテゴリーで評価する。本研究では,CAIプロトコルの日本語版を作成し,日本人児童における実施可能性と妥当性を検討した。93名(平均年齢9.8歳,男児46名)の児童に対し,CAI,Kerns Security Scale(KSS),およびWISCの下位検査を実施した。保護者は児童の気質に関するEarly Adolescent Temperament Questionnaireを記入した。本研究の結果は,先行研究の結果をほぼ追認するものであり,CAIによる愛着分類(安定型,軽視型,とらわれ型,非組織化型)の分布は,海外の報告とほぼ同様であった。性別や母親の就業状況による愛着分類への影響はみられなかった。母分類,父分類のそれぞれで,安定型の児童は不安定型の児童に比べて対応するKSS得点が高く,CAIによる愛着分類の妥当性が確認された。CAI尺度得点は,KSSと予想された相関を示し,気質とは相関がみられなかったことから,CAI尺度の妥当性も確認された。しかし,母分類で安定型の児童は不安定型の児童に比べ,WISC「単語」の得点が有意に高く,語彙力とCAIの関連についてはさらに検討が必要である。

【インパクト】

本研究は,日本人児童を対象に半構造化面接によって愛着を評価する初めての試みであり,新奇性がある。これまで愛着を測定することが不可能であった年齢層の児童の愛着測定方法として,海外では学術研究のみならず臨床・福祉領域でも活用されているCAIを,日本でも使用することが可能になることの社会的意義は大きい。イギリスで開発された質問項目や評価の手続きを日本人児童に実施可能かどうかを確認し,妥当性の検討を行った。

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