抄録
野生梅花鹿は、中国の国家一級重点保護野生動物である。絶滅危惧種として国際自然保護連合(IUCN)に認定されている。現在、中国国内に飼育梅花鹿は多くいるが、野生梅花鹿は依然として少ない。また野生梅花鹿の健康状態をモニタリングする方法は少ない。そこで、本研究では、16S rRNA ハイスループットシーケンシング測定法を用いて、野生と飼育梅花鹿の腸内微生物を測定し、また摂取食物の違いによる腸内微生物に対する影響を比較した。
本研究では、健康な梅花鹿体内で同様の主要腸内菌叢が検出された。当該菌叢の主要菌群はFirmicutes 門とBacteroides 門で構成されていた。比較実験の結果、野生梅花鹿と飼育梅花鹿の腸内菌群の量と多様性に大きな差異は認められなかった。したがって、摂食食物は、野生シカと飼育シカの健康的な腸内菌叢に影響を与えないことが検証された。これは、梅花鹿の腸内菌叢の強い共生進化能力を示している。この結果は、梅花鹿の健康状態のモニタリングに科学的根拠を提供するものである。