日本歯科麻酔学会雑誌
Online ISSN : 2433-4480
臨床
周術期の抗血栓療法をヘパリンに置換した口腔外科手術10症例の検討
筑田 真未石川 直樹大熊 嵩英太田 麻衣子笹原 健児宮野 敦志三浦 仁佐藤 雅仁城 茂治佐藤 健一
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2018 年 46 巻 1 号 p. 6-12

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抄録

【要約】 循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドラインでは, 大手術に際し抗血栓薬をヘパリンナトリウムに変更して周術期管理を行うよう推奨している. そこで当院における抗血栓薬服用患者の全身麻酔時の周術期の管理状況と術後出血合併症との関連について検討したので報告する.

 対象は, 2014年 (平成26年) 1月から2016年 (平成28年) 3月までに全身麻酔下に口腔外科手術を行った症例で, 抗血栓療法を受けていて周術期にヘパリン置換を施行した10例を対象とした. 調査内容は, 周術期の抗血栓薬の中止と再開の時期, ヘパリンナトリウムの術後の再開と中止時期, 術後出血の有無について診療録をもとに調査した.

 抗血小板薬内服群 (6例) では, 術後ヘパリンナトリウムを再開した症例は2例であり, 抗血小板薬の再開は手術1日後が5例, 手術4日後が1例で, 出血合併症はみられなかった. 抗血小板薬とワルファリンカリウム併用内服群 (4例) では, 全例でヘパリンナトリウムを再開し, ワルファリンカリウムは3例で再開した. 全例で出血性合併症がみられた. 1例は術後出血のためワルファリンカリウムを再開できなかったが, 手術10日後に創部からの大量出血により気道閉塞, 心肺停止にいたった.

 ヘパリン置換を行った患者で高頻度に術後出血がみられたことから, 安全な周術期管理を行うためには, 口腔外科, 歯科麻酔科および内科など関連する診療科で手術の侵襲度や止血の難易度などについて情報交換し, ヘパリン置換の適応を慎重に検討する必要があると考えられる.

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© 2018 一般社団法人日本歯科麻酔学会
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