日本歯科麻酔学会雑誌
Online ISSN : 2433-4480
臨床
全身麻酔下智歯抜歯術における術中使用鎮痛関連薬剤と術後鎮痛薬使用との関連性―後方視的観察研究―
篠田 眞保西村 晶子林 真奈美三浦 諄子飯島 毅彦
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2021 年 49 巻 2 号 p. 23-27

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抄録

【要約】 全身麻酔下の智歯抜歯術は, 麻薬性鎮痛薬を併用することで局所麻酔単独の手術よりも術中の疼痛を大きく抑制することができる. 予防鎮痛の概念では, 周術期全体を通して鎮痛を行うことで術後疼痛を抑制するとされることから, 全身麻酔による周術期の十分な鎮痛は術後疼痛管理にも有利であると考えられる. そこで全身麻酔下に智歯抜歯術を行った患者の術後早期の疼痛と, 手術中に使用した各種鎮痛薬との関連性について, 後方視的に調査し検討を行った. 調査対象は2020年3月から2020年8月までに昭和大学歯科病院において全身麻酔下に智歯抜歯術を行ったASA1~2の患者とし, 手術終了後の安静時間内における術後鎮痛薬投与の有無に関連する因子をロジスティック回帰分析を用いて抽出した. 解析対象となった74症例に関して, 術後鎮痛薬の投与に有意に関連する因子は抜歯本数と局所麻酔薬使用量であり, オッズ比は抜歯本数が3.0020 (p=0.0122), 局所麻酔薬使用量が0.6115 (p=0.0009) であった. 局所麻酔薬の追加投与の有無は術後疼痛と関連しなかった. 本研究の結果から, 全身麻酔下の智歯抜歯術において手術中の十分な局所の鎮痛が重要である可能性が示唆された. 今後は麻薬性鎮痛薬や消炎鎮痛薬, 伝達麻酔に関する詳細な検討を加えることで, 術後疼痛にも有利な周術期管理を確立できると考えられる.

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