【要約】 本調査は, 歯科治療時におけるメピバカイン塩酸塩製剤を用いた伝達麻酔の有用性を検証した. 日本歯科麻酔学会指導施設のうちの5施設において, 16歳から80歳で歯科治療のために伝達麻酔が必要とされた患者で本調査への参加に同意した者を対象とした. 総症例数は108例で中止症例はなかった. 性別は, 男性45名, 女性63名であった. 治療内容は抜歯が87名で最も多かった. 伝達麻酔は下顎孔が106例, 上顎結節と切歯孔が各1例であった. 下顎孔伝達麻酔に限ると, 使用量は1.8mlが82例で最も多く, 作用発現時間は4.5±2.0分 (mean±SD), 作用持続時間は166.3±75.4分であった. 治療時の痛みは, 「無痛」 が68例, 「ごくわずかな痛み」 が23例であり, この両者で84.3%を占めた. 全体的な有効性の評価は, 「有効」 が100例, 「やや有効」 が5例であり, この両者で97.2%を占めた. 全例において, メピバカイン塩酸塩製剤を用いた伝達麻酔と因果関係のある, 出血関連有害事象を含む有害事象はみられなかった. 全体的な有用性の評価は, 「有用」 が105例であり, 有効性と有用性との関係をみると, メピバカイン塩酸塩製剤による伝達麻酔が 「有効」 かつ 「有用」 であると評価された症例が100例 (92.6%) であった. 以上のことから, メピバカイン塩酸塩製剤を用いた歯科領域における伝達麻酔は有効性が高く, 有害事象を認めなかったことから, 十分に有用性が期待できると考えられた.