【要旨】 遠隔医療は情報通信機器を活用した健康増進,医療に関する行為と定義されている.遠隔医療を導入することで医師不足により適切な医療を受けることができない患者の減少,僻地での訪問診療に対する困難性の解消などが期待される.遠隔麻酔とは麻酔科医が不足する地域における医療施設の医師または看護師に対し,遠隔モニタリングを用いて麻酔科専門医が麻酔の支援を行うことであり,国内外を問わずその有用性に関する報告が散見される.われわれは小型バイタルサイン測定機器を活用した遠隔モニタリングシステムを開発し,歯科医院および歯科訪問診療時の患者全身管理へ導入してきた.歯科麻酔科医による遠隔モニタリングは臨床応用可能な方法であり,患者の安全性向上に寄与することが期待されるが,課題も多い.特に患者急変時の対応は最優先課題であり,現場の歯科医療従事者に対する歯科麻酔学教育の充実を図ることが不可欠である.