日本歯科麻酔学会雑誌
Online ISSN : 2433-4480
解説・記事
口腔顔面領域の神経ブロック療法
椎葉 俊司
著者情報
ジャーナル フリー

2025 年 53 巻 2 号 p. 83-89

詳細
抄録

【要旨】 神経ブロックとは末梢神経の近傍または神経束に針を刺入して,局所麻酔薬,神経破壊薬,高周波熱凝固法などによって神経機能を一時的,または長期的に遮断する方法である.九州歯科大学附属病院歯科麻酔・ペインクリニック科でよく行われる神経ブロック療法である星状神経節ブロック,三叉神経ブロック,トリガーポイント注射について解説する.

 星状神経節ブロック:頸部交感神経周囲に局所麻酔薬を注入するコンパートメントブロックである.交感神経活動亢進が関与する疼痛性疾患のみでなく麻痺性疾患にも使用される.痛覚変調性疼痛への治療効果の可能性もある.合併症を避けるために,超音波ガイド下に行う.

 三叉神経ブロック:カルバマゼピンによる薬物療法が奏功しない症例に対して行われる.当科では微小血管減圧術,ガンマナイフ治療を受けても疼痛コントロールができない症例に用いられることが多い.神経幹にブロック針を刺入し,神経破壊剤,高周波熱凝固で神経を破壊する.超音波ガイド,エックス線透視下に神経孔を明示して行われる.

 トリガーポイント注射:筋・筋膜性疼痛の治療法である.筋硬結内にあるトリガーポイントに局所麻酔薬を注入して痛みの悪循環を断つことで痛みを軽減する.筋・筋膜性疼痛への筋膜の関与が明らかとなっており,筋膜リリースを併用する.筋膜リリースは筋体周囲の筋膜の重積を生理食塩水,局所麻酔薬で剝離する.いずれも超音波ガイド下に行う.

著者関連情報
© 2025 一般社団法人日本歯科麻酔学会
前の記事 次の記事
feedback
Top