日本歯科麻酔学会雑誌
Online ISSN : 2433-4480
総説
頭頸部外科・口腔外科患者の気道安全:多面的アプローチ
木山 秀哉
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2025 年 53 巻 3 号 p. 110-116

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抄録

【要旨】 日本を含む各国の学会が作成した気道管理ガイドラインの考え方は,頭頸部外科・口腔外科手術患者には適用の難しい部分もある.気管挿管,マスク換気が不可能な場合,JSAガイドラインが推奨する声門上器具挿入は咽喉病変をもつ患者では慎重に行うべきか,あるいは禁忌である.CICVに陥って前頸部からの気道確保が必要になっても,頸部病変や組織の瘢痕化があると熟練の外科医でも難渋するかもしれない.患者の気道,併存疾患,施設の状況(物品,人員)を考慮して個別の対応が求められる.挿管の困難度を予測する最も確実な方法は,直前の口腔観察である.適切な口腔粘膜の局所麻酔と,自発呼吸を抑制しない軽度の鎮静を併用して,患者に大きな苦痛を与えずに咽喉周囲の観察が可能である.ビデオ喉頭鏡の所見を外科医や看護師と共有することは有用で,無理な挿管操作を続けず早期に意識下の気管切開に変更する判断の一助となる.困難気道への対処はデバイスの選択にとどまらない.気道確保操作の間,酸素飽和度を安全な範囲に維持する方策として高流量酸素の鼻腔投与が普及しつつある.鎮静下気管挿管を安全かつできるかぎり快適に行うには鎮静薬・鎮痛薬の適切な投与が不可欠である.調節性に富む短時間作用性の薬剤が適しているが,気道の浮腫や出血が生じると薬剤投与を止めても気道や自発呼吸は必ずしも元の状態には戻らない.覚醒と抜管は気道管理の最も危険な時期であるが,それが十分に認識されているとはいいがたい.抜管に関わる多職種が共通の認識をもつことが何より重要である.

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