2020 年 27 巻 1 号 p. 56-61
脊髄に対する電気刺激療法として近年国際的に注目されている経皮的直流電流刺激(transcutaneous spinal Direct Current Stimulation:tsDCS)の歩行機能への影響について,皮質脊髄路の活動に着目した検討を行った.対象は健常成人10名とし,Randomized sham-controlデザインで行った.tsDCSは,伏臥位にて陰極を第11胸椎部に,陽極を右上腕部に設置し,2.0 mAの刺激強度で20分間実施した.対照群は偽刺激を用い,被験者に知られないよう開始時30秒間だけ通電を行った.tsDCSの歩行機能への効果を検討するために,通常歩行時の筋活動を表面筋電図より記録し,下腿筋群間の筋電図コヒーレンスを算出した.結果,歩行時の遊脚初期において前脛骨筋近位部と遠位部間における15〜30 Hz(β)帯域のコヒーレンス値がtsDCS群で有意に向上することが示された.β帯域のコヒーレンス値は皮質脊髄路の活動を間接的に表すことが報告されており,tsDCSによる脊髄刺激は動的運動時の皮質脊髄路活動を修飾できる可能性が示されたものと考える.