2022 年 29 巻 1 号 p. 90-94
近年スポーツ界では,微弱電流刺激治療がスポーツ選手のケアやコンディショニングの分野まで実施されている.本研究では,頸椎から仙椎に通電する微弱電流刺激が自律神経バランスにどのような影響を与えるか検討した.被験者は各群,健常成人27名で,通電群(40.8±17.7歳)及び非通電群(コントロール群)(37.7±18.9歳)であった.ウエアラブルバイオセンサ(小型携帯用心電計)を用いて,自律神経バランス測定を行った.2元配置分散分析の結果,自律神経バランス測定パラメータ7項目の内,6項目で治療前後の主効果に有意差が認められた.治療有無の主効果は2項目(相対的交感神経活動度と交感神経/副交感神経領域比)で有意な低下が認められた.治療有無×治療前後の交互作用は副交感神経機能パラメータの2項目(安静時平均心拍と内在活力)で有意差が認められた.以上の結果より,頸椎から仙椎における微弱電流刺激は自律神経バランス,特に副交感神経機能を高める可能性が示唆された.