多くの理学療法士が筋力低下の改善に難渋するのはなぜだろうか? それは,「強度」という有効限界を超えるための壁が存在するためである.では,高齢者や患者に,どのようにしたら少しでも高い強度の運動を負荷できるだろうか? NMESは,その補助療法として有望なツールの1つである.しかしながら,筋力増強のためのNMESの至適条件については,基盤となる科学的根拠が不足しており,効果や適応が最大化されていないと言わざるを得ない.本稿では,主に基礎研究により得られた知見をもとに,筋力増強のためのNMESのポイントについて整理する.また,NMESを処方する上で,理解しておくべき筋力低下のメカニズムについて,細胞生理学的視点から概説するとともに,筋疾患に対するNMESトレーニングの作用について紹介し,筋力低下に対する安全で効果的なNMES処方の実現に向け,その可能性と課題について考えたい.