2023 年 30 巻 1 号 p. 26-31
物理療法の標的器官の1つである骨格筋は,廃用や加齢,疾患等により萎縮を呈する一方で,電気刺激による筋萎縮予防・治療効果が広く認められている.しかし,その作用機序については健常な骨格筋を対象に検証されたものが多く,病態下にある萎縮骨格筋への刺激応答性については科学的根拠が不足している.電気刺激の治療効果を最大限に引き出すためには,標的となる組織・細胞で生じる応答を解明し,適切な刺激条件・方法で介入することが求められる.加齢や廃用,がん悪液質や糖尿病などの病態によりタンパク質合成抵抗性が惹起されることから,病態に応じて電気刺激の至適条件を見直し,治療戦略を再考する必要があるのではないだろうか.本稿では,廃用性筋萎縮に対する電気刺激の効果及び作用メカニズムについて,主に基礎研究による知見をもとに概説するとともに,今後の電気刺激療法の展望について考察する.