論文ID: 2023-018
【背景】長期にわたる気管挿管では抜管後に嚥下障害を発症することが知られている.今回,COVID-19で人工呼吸離脱後に咽頭喉頭感覚の低下を認める嚥下障害に対して電気刺激治療を行った結果,嚥下機能の改善を認めた.【症例】症例は50歳代の男性.X+4病日で呼吸状態が悪化したため,人工呼吸管理となった.X+19病日に気管切開を行った.X+45病日に嚥下内視鏡検査を行った結果,高度な喉頭感覚の低下を認めた.X+54病日に嚥下機能の改善を目的に舌骨上筋群にNMESを開始した.また,NMESの通電時には努力嚥下を行った.喉頭感覚は改善を示し,X+95病日には3食すべて経口摂取が可能となった.【考察】本症例では気管挿管と気管切開が嚥下障害の主たる原因と考えられた.今回NMESでは表在に位置する舌骨上筋群を刺激したため,咽頭喉頭の感覚を支配する神経を直接刺激している可能性は考えにくい.したがって,NMESに併用して繰り返し随意的な嚥下運動を行うことで,喉頭感覚が刺激され,そのことが感覚障害の改善を促したと考える.