物理療法科学
Online ISSN : 2758-1063
Print ISSN : 2188-9805
経頭蓋静磁場刺激(tSMS)が拓くシン・リハビリテーション
芝田 純也
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ジャーナル オープンアクセス 早期公開

論文ID: 2025-002

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抄録

経頭蓋静磁場刺激(tSMS)は強力な小型のネオジム磁石を頭皮上に留置し,磁石直下の脳皮質の機能を抑制する非侵襲的脳刺激法である.従来の非侵襲的脳刺激法である,反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)や経頭蓋電気刺激と異なり,けいれん発作の誘発や皮膚火傷のリスクはない.また,刺激装置は磁石のみのため安価であり,刺激を行うにあたり特別な手技は必要とせず簡便である.磁石からの距離が大きくなると,静磁場の強さは急激に減衰するため,tSMS の直接的な効果は磁石直下の脳皮質に限定される.しかし,tSMS は磁石から離れた部位の脳領域の機能も脳内ネットワークを介して変化させることができる.我々はこの遠隔効果を利用してtSMS を脳卒中リハビリテーションに応用し,脳卒中患者の巧緻運動障害を改善させることに成功した.近年は新たなデバイス開発も進んでいる.我々が開発したシン磁場刺激装置はネオジム磁石を3 個組み合わせることで体表からより深い領域にまで,神経調節に必要な強度の磁場を形成することができる.シン磁場刺激装置によりtSMS の応用範囲が飛躍的に拡大すると考えられる.

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