抄録
常温人工心肺(CPB)を用いた開心術において、糖尿病患者ではHb酸素解離能の低下が酸素需給バランスにどのような影響を与えるのかRetrospectiveに検討した。DM群12名、Normal群25名を対象とし、酸素需給バランスを結合酸素(Bound O2)と溶存酸素(Soluble O2)に分けて検討した。CPB前ではP50に差を認めなかったが、CPB中よりDM群では低下し続けた。Bound VO2IとBound O2ERはDM群で低値を示し、静脈血Hb分画的酸素飽和度(%vO2 Hb)は高値を示した。また、Soluble DO2Iの増加に伴いBound O2ERが低下し、DM群でより低下した。したがって、DM群では%vO2 Hbが基準値以上であったが、Hb酸素解離能の低下によるDysoxiaの状態であった。より詳細な酸素需給バランスを評価するためにはBound O2とSoluble O2に分け、P50も考慮した総合的な評価が重要である。また、高いPaO2を避けることでHb酸素解離能の低下を防止できると考えられた。